今回取材させていただいたのは、ベンチャー企業“株式会社FlatBoys”の代表取締役内田遼氏。
株式会社FlatBoysは、現在セルフケア診断をベースに、顧客に最適な入浴剤(DAY TWO Epsom Salt)を提供するパーソナライズセルフケアブランド「DAY TWO」を運営しています。
2020年代中のIPOを目指して経営を行なっています。
<補足:類似企業のIPO例>
株式会社I-ne・・・美容ブランドBOTANISTやSALONIAで知られる
株式会社北の達人・・・北海道の産物を使用した商品を開発、販売する企業
プレミアアンチエイジング株式会社・・・クレイジングバーム「DUO」が有名
株式会社MTG・・・美顔ローラー「ReFa」で有名
この記事では、株式会社FlatBoysの内田氏をお招きし、実際の事業や将来展開、D2Cにこだわる理由などをお聞きしました。
- 主なプロダクトはパーソナライズ入浴剤
- 立ち回りが小売以上に柔軟なかつ、資金流入が盛んなD2Cモデル
- 10億円の売上を目指す
- 販売チャネルは、直販やセルフケア診断など、多岐方面にて準備中
- 内田氏はマーケティング経験が豊富で事業売却も経験
- まずはLINEアドを中心に広告を展開
- 収集したデータは、完全に整理され、今後の事業でも活用を検討
- 将来的にはトータルボディケアをパーソナルに提案できるブランドに成長させる¥
目次
1. DAY TWOブランド提供の想い
「DAY TWOブランドのビジョンと実際に行っている事業について順番にお聞かせてください。」
「ブランド自体には、良い習慣を作ってほしいという想いがあります。」
「DAY TWOのブランドの由来ですが、1日目だけではなく、2日目も頑張って乗り越えてほしいという意味を込めています。習慣化するために辛い2日目をポジティブにして欲しくて"DAW TWO"という名前にしています。」
2. 資本金について
「これは結構聞かれるかもしれませんが、資本金が10万円ですが、この理由をお聞かせ願えますか?」
「まず、事業運営上で不都合を感じなかったからと言うのが素直な感想です。」
「起業する際に先輩の起業家とか税理士さん、VCの方など、もろもろに相談をしたのですが、不都合はほぼありませんでした。」
「例えば、弊社は公庫からの融資も通っており、メガバンクの口座開設も不自由なくできています。今回イークラウドさんの審査にも通っております。」
「また、別に個人のエンジェル投資家の方から250万円も予定しており、資本金で不具合になることが今までなかったという感じです。」
「しかし、今回イークラウド様での資金調達にて多くの方から聞かれましたので、現在はこういうお声もあるんだなと真摯に受け止めております。」
3. 事業内容について
「実際の事業の方はどうでしょうか?」
「パーソナライズ入浴剤を中心にボディケア商品を提供していこうと考えております。」
「商品以外ですと、セルフケア診断とかで定期的にデータ取得させていただいて、それに合わせてお客様に最適なものをレコメンドさせていただいたり、サービス化していくと言う形を考えています。」
「最近、診断をやっているメーカーさんが増えていますが、この意図ってデータマーケティングだと思っていまして、僕らも診断というのを軸にデータを取っていき、ユーザーさんに最適なものどんどん提案していく展開にしたいと思っています。」
「入浴剤を入り口に、そっから+αとかのボディケアとかのトータルケアに持っていくというイメージでしょうか?」
「そうですね。DAY TWOはセルフケアブランド。あくまでユーザーさんの習慣を変えるためのブランドにしたいと思っています。」
「今回、第一弾プロダクトとして提供する入浴剤は20代〜40代がコアターゲットだと思いますが、例えば20代の方はあまりお風呂に入らない印象がありますが、そこはどう考えてらっしゃるのでしょうか?」
「入浴剤はいわゆるwant商材なんですね。対して、歯磨きとかシャンプーとかはmust商材。絶対使いますよね。」
「入浴剤のようなmustではないですが、使うと良いものを、mustにしていきたいというのはブランド立ち上げの理由でもあります。」
3-1. 10億円の売上を入浴剤だけで目指せる根拠
「10億円の売り上げを掲げていますが、入浴剤だけで目指されるのでしょうか?」
「はい。1ブランド。入浴剤だけでも10億円までいけると言う事業計画を組んでおります。」
「より具体的なプランなどありますか?」
「D2Cのモデルにおいて、いわゆる獲得の予算CPAと、お客さんがずっと使ってくれる(LTV)-どのくらい長く使ってくれるか、これらを使った計算式がありまして、ある程度の広告を踏めるという予測が立てられています。」
「これは類似の競合さんとかの数値を参考に作成しているので、結果10億円は十分に目指せるという積み上げの式ができます。」
「根拠はCPAとLTVの類似比較ですね。」
3-2. 入浴剤市場の背景について
「入浴剤市場のポテンシャルについて教えてください」
「市場的にも入浴剤はかなり伸びており、特に19年から顕著に伸び始めました。」
「リラックスとか、期待値が緩いまま使っていたものが、去年ぐらいから効能を謳うブランド等が増えてくることによって、肩こりを治すためとか、明確な目的で使うユーザーさんが増えて、実際の市場も伸びています。コロナでおうち時間もかなり増えたという背景もあります。」
「自社のシミュレーターで見てもずっと売上が伸びているんです。去年から伸びた中で、コロナのタイミングもあって、現在入浴剤がmust商材っぽくなり始めています。」
「want商材であり入浴剤が時代の流れによって、ちょっとずつmust商材になりつつあるから、その波に乗れると。」
「そうですね。時代の流れにも乗りやすいと思いますし、実際に顕著な売上の増加として出ています。」
3-3. 入浴剤後の展開について
「今後の、新しいプロダクトの構想はありますか?」
「今回の入浴剤市場が約430億円ですが、ここで一点突破した後に、ボディケア市場を攻める予定です。」
「ボディケアの市場規模は約2100億円程度。その市場をある程度勝っていくと、企業間的に有名外資メーカーのイメージになります。」
※ボディケアで有名な外資メーカーとしては、S A B O N、ロクシタンジャポン、Aesopなどがある。
「お洒落OLさんとかが使うような感じで、百貨店とかの高単価ブランドになります。ギフト需要のあるようなもので、5、6千円〜1万円くらいの単価感のものをネット通販中心にやっていく感じで考えています。」
「将来的には、有名外資のメーカーさんたちの売上規模を目指したいと思っています。」
「具体的な商材でいうと、お風呂の中で使用するボディシャンプーやボディソープなど(インバス商品)と風呂上がりに保湿で使う、ボディローションなど(アウトバス商品)の2種類を考えています。」
「この辺のラインナップは他社さんでもやっているのですが、ネット通販中心のD2Cメーカーという点が他社さんとの差別化要素ですね。」
4. D2Cであるメリットとは?
「D2Cにこだわる理由を教えてください。」
「そもそもD2Cがなぜ良いかですが、まず、大手販売店舗で売ってしまうと、メーカーに入ってくる情報は売上くらいという現実があります。」
「これに対して、D2Cは直でユーザーさんとやりとりできるので、ユーザーさんの声がわかりますし、そもそもどういう方でどこに住んでいる方かという情報もわかります。」
「例えば、小売では、次月に何かを変えるというのは非常に難しいです。」
「ですが、D2Cなら、毎月要望を聞けて変えられるので、小回りが効くというメリットがあります。」
「もう一つは単純に利益率が高くなる点です。」
「小売におろすと、中間マージンが大きすぎて利益率が低くなる傾向にあります。なので、結局大量ロットで作って、大量に渡して、大量に売るしかなくなってしまうんですね。」
「これでは、本当に拘ったものが作りにくくなります。」
「D2Cなら、何が売れてとか、ユーザーさんベースで何がほしいなどの情報が入ってくるので、小回りよくアップデートできますし、個々に回答しやすくなりますし、さっき申し上げたように、ビジネス的にも利益率が高いです。」
<D2Cのイメージ図>
4-1. D2C企業のバリューについて
「D2C企業の将来価値についてお聞かせください。今後、世間からどのような評価をされると考えていますか?」
「現在メーカーさんでIPOをしている銘柄さんの多くが小売中心の通販メーカーさんなんですが、決算を見るとわかるのですが、広告宣伝費以外では小売業者へのマージンが多い傾向にあります。」
「D2Cの会社さんも、そろそろ上場するとこが出てくると思いますが、上場した先には利益率をはじめとした従来のメーカーさんとの数字の違いが世間に顕になると思います。D2Cメーカーさんの上場時の値づけは、従来のメーカーさんとは変わってくるであろうと考えております。」
「付加価値もしっかりついて来て、株価もしっかり上がるだろうというイメージですかね?」
「そう考えていますね。」
※国内での資金調達額も顕著に伸びている。
5. 競合優位性について
「貴社の競合優位性についてお聞かせください。」
「まず、D2Cの入浴剤メーカーはないので、そこは強みだと思っています。」
「D2Cモデルの何がいいかですが、先ほども申し上げたように、ユーザーさんのフィードバックを直に受けつつ、早急にアップデーデートができる点と、価格や利益率を自社でコントロールができる点です。」
「例えば、資金状況を細かくコントロールして、マーケティングに回せたり、製品追加が柔軟にできたりします。」
「小売ですと、大量のロットで作らないといけないので、初期に大きくの倉庫を抱えてしまい、1回作ったものをなかなかアップデートできない問題もあります。」
「僕らは直販中心で初期ロット少なめに作りつつ、何回も改善できるって言う体制を製造元さんと話しながら使っているので、成分とかもユーザー様に合わせて柔軟にアップデートできます。」
「現状の競合優位性を今度も保って、早期に事業を拡大していきたいと思っています。」
「あとは、僕のバックグランド的にマーケティング、特にウェブマーケティングをやってきた経験も強みだと思っています。」
「ファッションメディアを運営立ち上げから、責任者、事業売却まで経験しています。」
「ブランディングからウェブで広告運用して、CPAを保ったまま、売上を上げていくことを、実際の現場でやっていましたので、こういう経験値を持っている人間がこのブランドやっていることは強みになると思っています。」
6. 具体的なマーケティング案について
「具体的なマーケティング案について、より詳しく教えてください。」
「オンラインはSNS広告、特にLINEを中心にやろうと思っています。」
「もちろん、Facebookやインスタなどの相性が良いチャネルには全部出していきますが、LINEなら直接セルフケア診断に飛ばすことができるという点や、新しいチャネルでもあり、実際獲得効率も良いので、LINEを中心に攻めていきます。」
「オフラインに関しては、今回ホットヨガスタジオLAVAさんとプレスリリースを一緒に出したのですが、LAVAさんとの事例をもとに、フィットネスジムとかとかヨガスタジオなどで、パーソナルトレーナーさんに販売していただくモデルも考えています。」
「オンラインとオフラインで分けて、最適なチャネルでの販売ルートを増やしていくイメージですね。」
「入浴剤を売るために、ユーザーとLINEを通してコミュニケーションをとるというのは、割と極端に言うとコスパが悪いのではと思うのですが、そこのハードルを下げる工夫とかどうされているのでしょうか?」
「むしろ逆というかですね、LP起点ではなく、LINE@起点、セルフケア診断起点で露出を増やしていまして、例えば、何とか診断をしてみませんかみたいな感じでテスト広告を出しているんですね。」
「こちら費用対効果もかなり良い感じです。」
(セルフケア診断の様子を見せていただきました。)
「入浴剤を欲しいと思った方が診断をやるのはハードルが高くてですね、実際やってくれる方もいらっしゃいますが、その数字も追いつつ、診断をやっていただいてから買っていただく方が楽なんですね。」
「診断が入り口ということですね。それなら、データ活用をしていくんだなとか、将来性が見えやすいイメージがありますね。」
「そうですね。診断起点の方が効率がいいですし、診断データもたまるので、こちらをオンラインでは主軸にしていくつもりですね。」
7. データ活用について
「この診断のところで収集できたデータの活用は考えられていますか?」
「今まさしくそれを考えています。現在、診断部分だけを提供している会社さんも出てきています。」
「しかし、僕らはそういう外部サービス使わず、全部内製で作っています。」
「内製で作ると、ユーザーデータを僕らの元に蓄積できますし、小回りが効くというメリットがあります。」
「データ整理とか統合とかの方が、データ活用では重要なので、それも全部自社でできるのも強みだと思います。」
「今後の展開によっては、例えば、睡眠と運動と食事とかのデータが取れてくると睡眠障害予防のための入浴剤以外の方法も提案できるでしょう。」
「実は、今回、起業する1個前の会社はディープラーニング系でした。」
「実際AIを活用したい企業さんは多いのですが、データがないケースや、データの整理がされてないケースが多く、そこが障害になっていました。」
「そのため、僕らは将来のデータ活用を見据えて、保有するデータの整理などを最初からしっかりやっています。」
「なるほど。最初から将来を見据えて、自社で全部取得してそのデータ整理をしっかりやっていると。以前ディープラーニング会社にいた経験も活きているということですね。」
「はい。ここは、強みになると思っています。ですので、最初から自前でデータベースも作っています。」
取材を終えて(感想)
取材をする前はD2Cの入浴剤メーカーという印象が強かったですが、取材を通して、強みはセルフケア診断を通したデータ活用や、マーケティング力にあると感じました。
D2C×入浴剤という競合優位性の強い市場を選定した上、そこでの収集データを活用した将来展開まで鮮明に描けており、とても将来が楽しみな企業です。
内田氏の誰に対しても温厚な人柄もとても好印象でした。
起業家にとって最も大事なのは、やりきる力だと思いますが、内田氏ならこの事業をしっかりやり切るだろうという意気込みを感じとることができました。
アプリ開発やデープラーニング会社での経験、マーケティング経験など、内田氏が持っている全ての経験がこの事業に活かされているのも良い点ですね。
<関連U R L一覧>
- 内田遼氏の公式note:入浴剤から「セルフケアブランド」を目指す理由
- ブランド「DAY TWO」の公式サイト:https://daytwo.jp/
- 株式会社FlatBoysの公式サイト:https://flatboys.co.jp