『SDGs』や『ESG』というキーワードをよく聞くけど、これらには一体どんな関係性があるのか?
昨今、SDGsやESGというキーワードは、地球上にいる全ての人々の共通概念となりつつあります。
今はまだ認知度が高くないものの、今後とくにビジネスの場では当たり前になると予測されるので、しっかり理解しておく必要があります。
しかし、SDGsとESGそれぞれの意味を何となく知っていても、両者の関係性が今ひとつ分からないのではないでしょうか?
結論から先に述べますと、『企業や団体、個人が本当にSDGs取り組んでいるのか?』この評価基準の1つとしてESGがあるという関係になっています。
この記事では、SDGsとESGの関係性について初心者でも分かりやすく解説しつつ、日常生活でどのように活かしていけば良いかまで考察していきます。
1. SDGsとは?
関係性を述べる前に、まずはSDGsとESGについて、簡単に解説します。
まず、SDGsとは『Sustainable Development Goals』の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれています。
2015年に開催された国連サミットにおいて、「持続的な開発のための2030アジェンダ」で採択されました。
SDGsは貧困や気候変動など、地球が抱えている17の課題で構成されています。
さらにそれぞれの課題には、アプローチするべきターゲットを定めており、合計169存在します。
例えば、課題1「貧困をなくそう」では、以下のようなターゲットがあります。
1.1. 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2. 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる。
1.3. 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.4. 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.5. 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。(以下略)
SDGsの最大のポイントは、政府に限らず、企業や個人も含めた地球上全ての人が課題に取り組むと定められていることです。
つまり、私たちも主体的に取り組むべき課題として掲げられたということ。
とくに「企業がどれほどSDGsに取り組めるか」が目標達成に大きく寄与すると、国連は指摘しています。
民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である。我々は、小企業から協同組合、多国籍企業までを包含する民間セクターの多様性を認める。
我々は、こうした民間セクターに対し、持続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを求める。
(持続可能な開発のための 2030 アジェンダから抜粋)
日本国内でも、大規模な異常気象や女性の社会進出などの課題がたくさんあります。
これらの課題を政府や企業に任せるのではなく、私たち自身も課題解決の当事者としてSDGsに取り組むことが求められています。
SDGsについて詳しい解説はSDGs公式サイト(英語)や「『SDGs(持続可能な開発目標)』とは?これからの世界共通言語をわかりやすく解説します!」で記載しているので、気になる方はぜひコチラの記事も参照してみてください。
2. ESGとは?
ESGとは
Environment:環境
Social:社会
Governance:統治
それぞれの略称であり、これから企業に求められる要素です。
ただ利益を追求するのではなく、ESGを考慮しない限り、長期的な事業活動ができないとされています。
分かりやすい例として、日本の高度経済成長期に起こった四大公害病があります。
企業が利益を追い求めるあまり、周辺の人々に大きな危害を被ってしまった責任を追及され、結果的に大きな損失を負ってしまいましたね。
このESGという概念は、2006年当時の国際連合事務総長である『コフィー・アナン氏』が「PRI:Principles for Responsible Investment(責任投資原則)」に盛り込まれたことが始まりです。
1. 私たちは投資分析と意志決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。
2. 私たちは活動的な(株式)所有者になり、(株式の)所有方針と(株式の)所有慣習にESG問題を組み入れます。
3. 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。
4. 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
5. 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
6. 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。
そして、SDGsが提唱されたことでESGの認知度一気に高まりました。
ESG投資とは?
ESGという概念を一番注目しているのは、投資家たちです。
というのも、はじめてESGが記載されたPRIは、投資家に向けて言及されたものだからです。
企業が事業活動できるのは、企業に投資する投資家がいるからこそ。
つまり、ESGを考慮しない企業活動をした結果、一番被害を受けてしまうのは投資家たちです。
リスクを抑えて長期的なリターンを得られるために、ESGを考慮した投資「ESG投資」が近年大きく注目されています。
とくに日本では、私たちの年金を運用する世界最大レベルの機関投資家GPIFが「PRI」に署名したことで、注目度は一気に上がりました。
2019年現在、明確なESG投資の手法は確立されていませんが、世界の名だたる機関投資家や調査機関がESG投資に関するレポートを毎年公開しています。
詳しくは「ESG投資とは?これから投資の共通言語を初心者向けにわかりやすく簡単に解説!」で解説しているので、ぜひご参照ください。
3. SDGsとESGの関係性とは?
SDGsとESG、それぞれ提唱された時期は違うものの、大きな関係性があります。
結論を申し上げると、企業が本当にSDGsに取り組んでいるのか、一つの評価基準としてESGがあると言えます。
一体どういうことでしょうか?
「SDGsに積極的に取り組んでいる企業は、必然的にESGも考慮された企業活動を行っている」といえます。
その結果、投資家がそのような企業に積極的に投資(ESG投資)すれば、企業はよりSDGsに基づいた事業活動に取り組めるようになります。
そして最終的に、持続的な事業活動が実現し、投資家も長期的なリターンが得られるようになると考えられています。
どうやってESGを評価するの?
しかし、ここでポイントなのは、「投資家は企業が実際にSDGsに取り組んでいるのか」つまり「ESGが考慮された事業活動をしているのか」をどのように判断すれば良いのか?という点です。
先ほども申し上げた通り、ESG投資には明確な手法、判断基準まだ確立されていません。
企業側も「どのようにSDGsに取り組んだら良いのか」また「どうやって投資家に説明したら良いのか分からない」のもあります。
これにはESGは非財務情報が多く、客観的な評価が難しいことが一番の背景としてあげられます。
企業は、自らの経営状況を財務情報と非財務情報を合わせた「統合報告書」を公開することで、投資家へ説明していますが、それだけでは投資の意思決定を行うのが難しいです。
第三者の調査報告書を参照することもありますが、企業と投資家の直接対話する機会を設けることが、ESG投資において重要視されています。
紙面上の説明で終わらず、企業からダイレクトに経営状態を聞くことで、本当にESGに配慮した経営を行なっているか判断できるのではないかと考えられています。
4. 具体的に私たちは何をしたらいいのか?
ここまで、SDGsとESGの関係性を企業と投資家の視点で解説しました。
これは決して、私たちには無関係ということではありません。
SDGsは、地球上にいる全ての人々に課せられた目標です。できる範囲でSDGs達成に向けて、具体的な行動を行うことが大切です。
「そんなこと言われても、具体的に何をすれば良いの?」と思いますよね。
残念ながら、SDGsを採択した国連からは、何をすれば良いか具体的に示されていません。というのも、私たち一人ひとりの状況は異なり、SDGsに貢献できることも違ってくるからです。
私個人の意見としては、SDGsに貢献しそうだと思えることを、自分ができる範囲で行うことが大切だと考えています。
例えば、電気をこまめに消すという些細な行動一つとっても、SDGsの目標7「エネルギーをクリーンにそしてみんなに」に十分貢献しています。
その判断基準として、あえてESGを自分自身に当てはめてみるのも良いかもしれませんね。
まとめ
SDGsとESGは、これからの地球における重要な概念。
その関係性は、SDGsの評価基準の一つとしてESGがあるということ。
とくに投資家にとっては、長期的なリターンを得るための手法として「ESG投資」が近年大きく注目されています。
企業にとっても、投資機会を得るためにESGを考慮した事業活動が求められています。
しかしながら、大切なことは、私たち個人としてもSDGs達成に貢献できる事を行っていくこと。
私自身も常日頃からSDGsに基づいた行動を心がけています。
あなたが、可能な範囲でSDGs達成に貢献できるよう、この記事が参考になれば幸いです。
参考文献一覧
- 投資家と企業のためのESG読本』
- ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書』
- 村上芽 SDGs入門』(日経文庫)
- アムンディ・ジャパン (編集)『社会を変える投資 ESG入門』
- 加藤 康之 (著)『[普及版]ESG投資の研究 理論と実践の最前線』
- GPIF公式
- 国連広報センター公式-SDGs
- 外務省公式-SDGs
本記事の著者
亀井郁人(かめいふみと):Webライター・Webメディア運営/編集
1994年生まれ。神戸大学工学部卒業後、新卒フリーランスに。FinTechを専門とした記事を多媒体で執筆しつつ、ソーシャルグッドなWebメディア運営や編集、ワークショップ事業を行う。最近では、ESG/SDGsについての研究も行っており、マネとも!ではESG/SDGsのコラム執筆及びESG/SDGsに沿った事業アイデアの提案、サポートを行っている。